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概要

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コラム・コープ安全のひみつ?農薬や食品添加物のADIってなに?食の安全・安心をとりまく状況も、日々さまざまな情報で変化していきます。今必要な情報は何か。科学ジャーナリスト松永和紀さんによる最新の情報を、コラム形式でお届けします。化学物質の影響は食べる量により異なる前回、さまざまな物質や微生物の人への影響の大きさは、食べる量によって変わることを説明しました。たとえば毎日食べている塩や砂糖であっても、一度に何百グラムも食べると死ぬと考えられており、このことは動物実験でも明らかになっています。しかし、そんな塩や砂糖は、量が適正であれば人に有益に働きます。実は私たちは古来から、無意識のうちに物質の量を調節して食べてきたのです。農薬や食品添加物も、この「量を調節して人体に影響がない範囲で使う」ということが重視されています。たとえば害虫や雑草、食中毒菌など、増えては困る生き物には効果的で、しかし人には影響の小さい化学物質を選び、さらに量を調節して使用します。その際には、一日摂取許容量(ADI)という数値を基に、使用する量プロフィール科学ジャーナリスト。京都大学大学院農学研究科修士課程修了(農芸化学専攻)。毎日新聞社に記者として10年間勤めたのち独立。食品の安全性や環境影響等を主な専門領域とまつながわきして、執筆や講演活動松永和紀さんなどを続けている。「メディア・バイアスあやしい健康情報とニセ科学」(光文社新書)で科学ジャーナリスト賞2008を受賞。2011年から、科学的に適切な食情報を収集し提供する消費者団体「Food Communication Compass(略称FOOCOM=フーコム)も運営している。の規制が設けられています。雑草を枯らす除草剤を例にあげてみましょう。人は光合成をしないので、植物の光合成経路をストップさせる除草剤であれば、人への影響は小さいと考えられます。この除草剤を実際に動物に大量に与え、本当に哺乳類への影響が小さいかどうか試験をします。しかし、どれほど影響が小さくても、食べる量が非常に多ければ死んでしまいます。塩や砂糖と同じですね。そのため、大量に食べさせる試験などを複数の動物で行なって、どの動物でも影響が出ない量を突き止めます。これを、「無毒性量」と呼びます。そして、この無毒性量をさらに安全係数と呼ばれる数値(一般に100ですが、1000の場合もあります)で割った値が、人の一日摂取許容量(ADI)となります。このADIは、「人がその物質を毎日一生涯にわたって摂取し続けても、現在の科学的知見からみて健康への悪影響がないと推定される一日当たりの摂取量」という意味です。私たちが一般的な食生活をおくっている時には、いろんな種類の食品を食べています。こうした食生活をしていても、摂取量がA DIを越えないように、各食品に含まれてもいい食品添加物や農薬の基準が決められます。したがって、各食品に含まれていてもいい基準は、ADIの数値に比べて著しく小さいものになります。でも、その小さい基準であっても超えたら違反になります。こうして、農薬や食品添加物がもし食品に残留していても、基準値以内なら私たちの安全性は高度に保たれているのです。08コーポロ2017年5月号