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概要

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コラム・コープ安全のひみつ?微生物が原因の食中毒どれぐらい怖いの?食の安全・安心をとりまく状況も、日々さまざまな情報で変化していきます。今必要な情報は何か。科学ジャーナリスト松永和紀さんによる最新の情報を、コラム形式でお届けします。はちみつで、死亡事故生後6カ月の乳児が市販のはちみつにより亡くなった、と4月に報じられました。原因は、ボツリヌス菌。乳児が食べると、腸内細菌が十分に増えていないために、ボツリヌス菌が腸内で増殖して毒素を出し、深刻な症状に見舞われる場合があります。1歳を過ぎる頃には腸内環境が整い、少しのボツリヌス菌なら消化できるようになりますが、ボツリヌス菌は加熱されても「芽胞」という形をとって生き残り、温度が下がると菌として増殖します。そのため、厚生労働省は1987年より、「1歳未満の乳児にははちみつを与えないように」と通知を出していました。母子手帳にも記載され、業者の多くも製品に表示していましたが、残念なことに情報が十分には理解されていなかったようです。微生物による食中毒は発生しやすく、しかも後遺症プロフィール科学ジャーナリスト。京都大学大学院農学研究科修士課程修了(農芸化学専攻)。毎日新聞社に記者として10年間勤めたのち独立。食品の安全性や環境影響等を主な専門領域とまつながわきして、執筆や講演活動松永和紀さんなどを続けている。「メディア・バイアスあやしい健康情報とニセ科学」(光文社新書)で科学ジャーナリスト賞2008を受賞。2011年から、科学的に適切な食情報を収集し提供する消費者団体「Food Communication Compass(略称FOOCOM=フーコム)も運営している。が残ったり、場合によっては死に至ることもあります。「微生物のリスクは非常に大きく化学物質の比ではない」と食品の安全性を研究する科学者は考えています。ところが、あまりにも身近なリスクのせいか消費者の関心は低く、化学物質ほど注目されていません。年間に、数百万人の患者発生?厚生労働省の統計では、年間に食中毒事故が1000件前後発生し、2万人を超える患者が出ていますが、そのうちの9割は微生物が原因となっています。ところが、この数字は氷山の一角。統計に出てくるのは、医療機関を受診し検便検査で細菌やウイルスなどが検出され、医師から食中毒患者として保健所に報告された数字だけなのです。飲食店や家で食事をした後に体調を崩したけれど、届け出なかったという経験を持つ人は多いのではないでしょうか。医療機関でも、検便検査をしないことがしばしば。表に出ない食中毒はとても多いのです。国立感染症研究所などが住民や検査機関の詳しい調査をした結果、微生物による実際の食中毒件数は厚労省の統計の数百倍と推定しました。つまり、年間に数百万人という患者が発生している可能性があります。私たちはもっと、微生物による食中毒を警戒する必要があります。食中毒予防のための3原則予防のための3原則は、原因となる微生物を「付けない、増やさない、やっつける」です。食品にはなるべく付けず、管理に気をつけて増やさず、なるべく火を通08コーポロ2017年6月号