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概要

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コラム・コープ安全のひみつ食品添加物有用性がある?には?食の安全・安心をとりまく状況も、日々さまざまな情報で変化していきます。今必要な情報は何か。科学ジャーナリスト松永和紀さんによる最新の情報を、コラム形式でお届けします。殺菌料で、安全性向上「食品添加物は、品質の悪い原材料をごまかすために使われている」と思われがちですが、そうではなく、有用性もあります。2012年に北海道で起きた白菜の浅漬けによる腸管出血性大腸菌の食中毒事件を覚えていますか?8人が亡くなった深刻な事件でしたが、食品添加物を適切に用いることの重要性がクローズアップされた事例でもありました。腸管出血性大腸菌はわずか数個を食べただけでも発症する可能性があるとされるとても怖い菌です。ところが、牛の1?2割は腸内に保有し、無症状なのです。その糞尿で作られた牛糞堆肥には腸管出血性大腸菌が残ってしまう場合があり、畑で野菜に付くこともあります。土壌にはほかの微生物も数多くいて、汚染のリスクは小さくありません。北海道の食中毒事件では、白菜から菌を除去しきプロフィール科学ジャーナリスト。京都大学大学院農学研究科修士課程修了(農芸化学専攻)。毎日新聞社に記者として10年間勤めたのち独立。食品の安全性や環境影響等を主な専門領域とまつながわきして、執筆や講演活動松永和紀さんなどを続けている。「メディア・バイアスあやしい健康情報とニセ科学」(光文社新書)で科学ジャーナリスト賞2008を受賞。新刊は「効かない健康食品危ない自然・天然」(光文社新書)れなかった可能性が指摘されました。以前から、浅漬けやキムチなどが原因の食中毒事件が何件も起きていました。そのため、厚労省は同年、漬け物製造のルールを定めた「衛生規範」を改訂し、殺菌料を適切な濃度で用いてしっかりと殺菌するか、加熱殺菌をするように事業者に求めました。殺菌料は、洗い流して食品中には残らないようにすることが食品衛生法により定められているため、安全性の懸念はありません。袋入りですぐに食べられるサラダ用野菜も、殺菌料が用いられています。殺菌料により栄養素がすべて流出してしまう、という情報は間違いで、表面の水に溶けやすい栄養素が洗い流されることはあっても、多くの栄養素は残ると実験で確認されています。加工食品の食中毒や腐敗を防ぐ家庭で浅漬けやサラダを作る際に、丹念に流水で洗って微生物を除去し、すぐに食べるのであれば、食中毒の可能性は小さいでしょう。しかし、「作る時間がない、でも野菜は摂りたい」という人たちも増え、加工事業者の役割は大きくなっています。事業者はたくさんの野菜を取り扱うので、家庭と同じように大量の流水で根元まで手洗いするのは、人手の面からも、水の無駄使いを防ぐ、という観点からも難しく、殺菌料を適切に用いて安全性を確保するよう求められているのです。殺菌料だけではありません。ほかにも、保存料やp H調整剤など、微生物の増殖を抑える効果を持つ食品添加物は数多くあり、加工食品による食中毒や腐敗の防08コーポロ2017年8月号