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概要

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にされてしまったのです。子どもたちは戦争の影響を確実に受けています。11歳のムハンマド君はシリアに住んでいましたが、戦火を逃れて一家でヨルダンに避難してきました。空爆に巻き込まれた父親とは、今も連絡がとれません。ムハンマド君はごみの中から鉄くずやパンのかけらなどを集め売り、家計を支えています。彼の母親は「この子は学校に行くのが大好きだった。こちらでも通わせてやりたいが、この子が学校に行くと一家の収入がなくなる」と葛藤しています。彼は戦争によって学ぶ機会を奪われたのです。また、戦火を逃れたとしても、経済的に厳しい子どもたちから先に犠牲になってしまいます。私はアブドラ君という5歳の男の子に出会いました。彼は自宅で爆撃にあい、落ちてきた天井の破片が頭に刺くうさって治療中でした。意識はなく、声をかけても空を見つめるだけ。私は少し迷いましたが、アブドラ君の痛々しい姿を写真に撮り、彼の母親に渡しました。彼女は「嬉しいわ。写真は焼けてしまって1枚もなかったの。今度は元気になったこの子を撮りに来てね」と喜んでくれました。その少し後、一時回復したアブドラ君の容体は急に悪化。高度な治療を受けるお金もなく、彼は生きる機会を奪われてしまったのです。私は、直接人を救えない自分の仕事の意味を疑いましたが、現地のNGOの方がこう言ってくれました。「これは“役割分担”です。私は現地で人々に手を差し伸べることはできますが、ここで起こっていることを世界中に伝えることはできない。あなたにはそれができる」と。私たちには、どんな立場にあっても少しずつ持ち寄りあえる役割が必ずあるのです。想像と共感で生まれる一筋の希望東日本大震災のわずか1カ月後、私は陸前高田市の仮設住宅を訪れました。その際、住民の方にシリアの状況をお話ししたところ「シリアの子どもたちが厳しい冬を越せるように」と、仮設住宅中の不要になった服や物資を段ボール10箱分も集めてくれました。「自分たちは世界中からの支援で立ち上がったから、今度はこちらから恩贈りをしたい」と言ってくれたのです。彼らは自らも厳しい状態に置かれているからこそ、故郷や大切な人を理不尽に奪われた経験に共感し、シリアの子どもたちのくらしを想像することができるのです。無関心こそが人を追い詰めるシリアで避難生活を送る人はこう話しました。「私たちを本当に追い詰めるのは政府でも兵器でもない。今ここで起こっていることに、世界の人々が『無関心』であることだ」。世界の貧困をなくすために今すぐできるのは、想いを馳せて想像することです。世界で起こっていることに関心を寄せ、問題意識を分かち合うことが、子どもたちの笑顔があふれる豊かな社会の第1歩になると信じています。講演会後の質疑応答で…組合員私たちにも日常の中でできることはありますか?安田さん日常の中に世界のことを思い出し、考えるヒントを広げていきましょう。例えば、私は友人の誕生日によく、シリアで作られた「アレッポの石鹸」を贈ります。▲オリーブオイルソープアレッポの石鹸宅配にて3月4回、4月4回取り扱い予定アレッポはシリア北部にある都市。近年、内戦状態にあったアレッポは、良質なオリーブ油とローレルオイルを使った石鹸づくりでも有名でした。アレッポの石鹸は単に贈り物としても喜ばれますが、この石鹸をもらった人は、使うたびにシリアについて考える機会が生まれます。意識を向けられていれば、募金などの次の行動につながる可能性があります。こうして、関心の輪を広げていくことができるのではないでしょうか。ぜひ参考にしてみてください。コーポロ2018年3月号09