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概要

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?科学的な視点から、食の安全・安心について学ぶコラムです。今月のテーマ「リスクのものさし」を使って優先順位を決める畝山さんに聞く!リスクを計る「ものさし」前回、食品中にはいろいろな発がん物質が含まれる、というお話をしました。発がん性の他にも知能発達や生殖能力への悪影響があるものなど、できれば避けたいのに食品に含まれているものはたくさんあります。対策すべきものがたくさんあって、一度に全部をやることができない場合にはどうすればいいでしょうか?それは、優先順位をつけて順番に対処していくことです。発がん物質、と言っても非常に強力なものから弱いものまでさまざまで、私たちが食べている量も違います。そこでリスクの大きさを計算して、大きいものから優先的に減らしていくのです。リスクは、その物質の有害性である「ハザード」と私たちが食べている量である「ばく露量」で決まります。発がん性が非常に強いものでも摂取量が少なければリスクは小さくなり、あまり作用が強くなくてもたくさん食べるものならリスクは大きくなります。リスクの大きさをどう表現するのかにはいろいろな指標があって、例えば人口10万人あたり何人ががんになるか、とか、動物実験で動物ががんになる量と私たちが食べている量にどのくらいの差があるのか、といった数字で表現することができます。こうしたリスクの「ものさし」を上手に使いこなして判断できるようになるのが理想的ではありますが、ここでは「リスクはものさしで計れる」ということだけ覚えて欲しいと思います。大きいリスクを優先的に減らそう大事なのは客観的な数字で大きさを表現して比較することです。私たちは日常的に、1日10円を節約して3年過ごすか、一気に10,000円節約した方がいいか、といったような計算をして行動しています。リスクも同じで、小さいリスクをたくさん心配するより大きなリスクをひとつ減らしたほうが効果的な場合がほとんどです。がんが心配なら、残留農薬や食品添加物に注意してもほとんどリスクは変わりませんが、たばことお酒を減らすことで大きく減らせます。一般的に、食品に由来する健康被害で最も大きいのはバランスの悪い食生活による肥満や糖尿病、高血圧、痩せなどで、次いで調理不十分や不適切な取り扱いによる食中毒、そしてアレルギーなどの順番です。もちろん人によって食生活はさまざまなので、一番大きなリスクになっているものは違うでしょう。日本人の場合は塩の摂りすぎに注意した方がいい人が一番多いと思います。がんについては国立がん研究センターがん情報サービスの『科学的根拠に基づくがん予防』冊子を参照https://ganjoho.jp/data/public/qa_links/brochure/knowledge/301.pdf教えてくれるのは…うねやま畝山ち智か香こ子さん国立医薬品食品衛生研究所安全情報部長東北大学薬学部卒、薬学博士。生化学、薬理学を専攻して食品や医薬品の安全性研究に従事し、2003年以降食品中の化学物質の安全性に関する情報収集と提供を主に行ってきた。主な著書は、『ほんとうの「食の安全」を考える-ゼロリスクという幻想』(化学同人)『「健康食品」のことがよくわかる本』(日本評論社)など。10コーポロ2019年11月号