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概要

bookcopolo2006

教えて!森田さん?食の安全・安心情報を科学的視点で、皆さんに分かりやすくお伝えするコラムです。今月のテーマ身近で危険な食中毒に要注意家庭にも潜む食中毒の危険腹痛、下痢、おう吐などの症状が出る食中毒は、食品に含まれる細菌やウイルスが原因で起こり、時に命を奪うこともあります。国が発表する統計によると、毎年数万人が食中毒にかかっており、2016年には腸管出血性大腸菌O-157で10人の方が、ここ数年は野草などの誤食で数人の方が命を落としています。統計では飲食店や施設などでの発生報告が多いのですが、実は家庭でも多く発生しており、台所での食中毒予防が大切です。細菌、ウイルスによる食中毒ひとくちに食中毒と言っても、その原因はさまざまです。1つは細菌で、代表的なものは腸管出血性大腸菌(O-157、O-111など)やサルモネラ属菌など。温度や湿度などの条件が揃うと食べ物の中で増殖し、夏場(6~8月)に多く発生します。菌によって潜伏期間や症状が異なり、たとえばカンピロバクターは潜伏時間が1~7日間とやや長く、感染した数週間後に手足の麻痺や呼吸困難などを起こす「ギラン・バレー症候群」を発症する場合があると指摘されています。カンピロバクターは生や加熱不足の鶏肉が主な原因です。もう1つはウイルスで、ノロウイルスが代表的です。細菌のように食べ物の中では増殖しませんが、体内に入ると人の腸管内で増殖し、食中毒を引き起こします。低温や乾燥した環境中で長く生存し、冬場(11~3月)に多く発生します。調理者から食品を介して感染する場合が多く、他に二枚貝に潜んでいることもあります。2013年以降、カンピロバクター、ノロウイルス、アニサキスが食中毒の原因物質の上位3位を占めています。アニサキスは生鮮魚介類につく寄生虫で、食後数時間から数日後に激しい腹痛を起こします。この他にも毒キノコやフグなどの「自然毒」なども原因となります。食中毒の予防3原則家庭で食中毒を予防するには、「つけない」「増やさない」「やっつける」の3原則を守ることが大切です。細菌やウイルスを「つけない」ようにきちんと手洗いをして、食器用スポンジやふきん、シンク、まな板などを清潔に保ちましょう。次に「増やさない」では、冷蔵保存がポイント。食材はすぐに冷蔵庫に入れて、庫内の温度が上がらないよう詰めすぎにも注意が必要です。「やっつける」は加熱殺菌が大事で、特に肉料理は中心までよく加熱するようにしましょう。アニサキスも冷凍や加熱で予防できます。ちなみに新型コロナウイルスは、食品を介して感染することはないとされていますので、食品について神経質になる必要はありません。とはいえ、きちんとした手洗いが大事という点では、感染予防も食中毒予防も同じこと。こうした習慣が私たちの身を守ることにつながるのです。執筆者PROFILE消費生活コンサルタントもりた森まき田満樹(一社)Food Communication Compass代表。東京海洋大学非常勤講師。食品安全、食品表示、消費者問題について講演や執筆活動を行っており、消費者庁や厚生労働省の検討会の委員も務める。著書は『新しい食品表示がわかる本(女子栄養大学出版部)』『食品表示法ガイドブック(ぎょうせい)』など。08コーポロ2020年6月号