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概要

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教えて!森田さん?食の安全・安心情報を科学的視点で、皆さんに分かりやすくお伝えするコラムです。今月のテーマ食品添加物はなぜ嫌われる?食品添加物は悪いイメージがあり、できれば避けたいと思う方も多いと思います。しかし、7月号でお伝えした通り、国が安全性を認めたものだけが使われる仕組みで、人の健康に悪影響が出ないように使用量も厳しく管理されています。なぜ、嫌われてしまうのでしょうか。かつて食品添加物が問題となった事例理由は、食品添加物のたどってきた歴史にありそうです。戦後の混乱期から昭和40年代頃にかけて、食中毒事件がいくつか起きました。1966(昭和41)年、農家でぼた餅に人工甘味料「ズルチン」を大量に入れ、家族が急性食中毒になった事件が起き、ズルチンは2年後に使用禁止となりました。昭和40年代以降は、添加物の安全性についてさまざまな観点から試験が行われるようになり、問題のあるものは使用禁止とされました。例えば豆腐に用いられる「AF-2」という防腐剤は、ある試験で発がん性が疑われて1974(昭和49)年に認可が取り消されました。当時、私は小学生で、母親は「添加物はがんになる」と心配していたことを思い出します。その後、1つの試験だけで発がん性があるとは言えないことが分かり、AF-2もさらなる試験で問題なさそうだと分かりましたが、再び使われることはありませんでした。昭和40年代以降、添加物による事故は起きていませんが、週刊誌などで、未だにかつて問題になったことを取り上げ「添加物は危ない」といった記事も見かけます。2003(平成15)年にスタートした食品安全委員会は、添加物をどのくらいだったら食べ続けても安全か、がんにならないか、子孫に影響を与えないかを調べています。それをもとに厚生労働省が使ってもよい基準などを決めますが、そのことはあまり知られていないようです。食品添加物の役割を知って上手に活用をすっかり嫌われ者となってしまった食品添加物ですが、使うときには必ず目的があって使用されます。例えば豆乳を固めて豆腐にするための「にがり」、こんにゃくを固める「水酸化カルシウム」などの食品添加物は、それがないとその食品はできません。日持ちを良くする、酸化を防止するなど、食中毒にならないよう安全のために使われる場合もあります。また、減塩のためにうま味調味料を使ったり、カロリー制限のために甘味料を使ったりと健康的な食生活を支える一面もあります。かつて無添加にこだわった私の母は、今は血糖値管理のため、甘味料を使っておやつを作っています。このように、添加物にはさまざまな役割があるので、国やメーカー、流通などの安全性の取り組みも知った上で、上手に暮らしに取り入れていただければと思います。生協のように添加物をできるだけ使わないよう配慮しているところもあります。気になる方は、食品のパッケージの表示をチェックするとよいでしょう。執筆者PROFILE消費生活コンサルタントもりた森まき田満樹消費者団体(一社)Food Communication Compass代表。消費生活コンサルタント、東京海洋大学非常勤講師。食品安全、食品表示、消費者問題などで、講演や執筆活動を行っている。国の審議会・検討会は、消費者庁・食品表示一元化検討会委員、食品添加物制度に関する検討会委員、厚生労働省・食品用器具及び容器包装の規制に関する検討会委員など。著書は『新しい食品表示がわかる本(女子栄養大学出版部)』『食品表示法ガイドブック(ぎょうせい)』など。08コーポロ2020年11月号