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概要

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コラム・コープ安全のひみつ環境ホルモン問題その後の研究は??食の安全・安心をとりまく状況も、日々さまざまな情報で変化していきます。今必要な情報は何か。科学ジャーナリスト松永和紀さんによる最新の情報を、コラム形式でお届けします。1990年代に、さまざまな化学物質がホルモンに似た作用を持ち、人や野生生物の生殖を妨げオスのメス化などを引き起こしているのではないか、と大きな騒ぎとなりました。いわゆる環境ホルモン問題です。当時、日本政府は数百億円を費やして研究を行ないましたが、人に深刻な作用をもたらす物質は見つからず、じきに新聞やテレビなども取り上げなくなりました。しかし、研究は今も続いています。現在の状況をご紹介しましょう。ごく微量での人への作用研究は続いている環境ホルモンという言葉は、テレビ局が作った俗語で、正しくは「内分泌かく乱化学物質」と呼びます。環境省は、対応計画「SPEED’98」を策定し、67の物質を詳しく調べました。いくつかの物質はメダカや貝類などに影響する可能性が指摘されました。プロフィール科学ジャーナリスト。京都大学大学院農学研究科修士課程修了(農芸化学専攻)。毎日新聞社に記者として10年間勤めたのち独立。食品の安全性や環境影響等を主な専門領域とまつながわきして、執筆や講演活動松永和紀さんなどを続けている。「メディア・バイアスあやしい健康情報とニセ科学」(光文社新書)で科学ジャーナリスト賞2008を受賞。新刊は「効かない健康食品危ない自然・天然」(光文社新書)でも、内分泌かく乱作用はごく微量での現象と考えられ、実験が非常に難しいのです。そこで、環境省は約5年おきに対応計画を策定し、研究を推し進めています。細胞実験や魚類、両生類などを用いた実験方法を確立し、それで影響がありそうなら、ほ乳類などでも確認していく計画です。さらに、野生生物にどのような化学物質が蓄積しているかなども調べています。現在のところ、人に影響のありそうな物質は見つかっていません。一方で、人が排出した女性ホルモンが、下水処理施設で活性を失わず海に出ており、野生生物に影響しているかもしれないこと、60年代まで工業的に多く用いられていた有機塩素系化合物が、ホルモン作用を持つ可能性があることなどもわかってきています。環境省は、胎児が誕生し13歳になるまで、血液検査、質問票調査、面接調査などでフォローし、環境中の化学物質が子どもの成長発達に影響を与えるかどうかを調べる全国調査(通称エコチル調査)も実施しています。2027年まで調べ、分かったことを随時発表していく予定です。容器包装に用いる物質はポジティブリスト制へまた、ほ乳瓶や缶詰などから溶出すると問題視された化学物質ビスフェノールAについても世界各国で研究が進み、欧州食品安全機関は2015年、消費者の現在の摂取量であれば、健康リスクはないと結論づけました。日本の食品安全委員会やアメリカ食品医薬品局もほぼ同様の見解です。日本の場合、2000年代前半には各企業がビスフェ08コーポロ2018年1月号