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概要

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ウスビ・サコOussouby SACKO京都精華大学学長マリ出身。北京語言大学、南京東南大学などを経て、京都大学大学院工学研究科建築学専攻博士課程修了(工学博士)。2018年4月より京都精華大学学長に就任。専攻は空間人類学で、国や地域によって異なる環境やコミュニティと空間の関係を研究。くらしの身近な視点から、多様な価値観を認め合う社会の在り方を提唱している。畑サコさんが考える国際化とは、どのようなことでしょうか。サコ同質化ではなく、日本を見せることが国際化だと思います。グローバル化で重要なのは、流されないことです。差異がある中で共存し、違いを認め合っていくことが大切です。日本には、外国人に合わせた表面的な日本を見せようとする姿勢があるように思いますが、日本に来る外国人は恐らく、日本の精神の根底を知りたいのです。例えば「なぜサッカーのワールドカップの試合の後に、清掃するのか」。そのような日本人の精神に憧れているのだと思います。畑私たちはそういった日本人の良さを失いかけているのかもしれませんね。国際社会の一員として一人ひとりに求められるもの畑京都精華大学の構想の1つに「グローバル化」がありますが、京都生協も国際社会の一員としてSDGsを意識しています。例えばエシカルな商品を扱い、生産現場の情報提供を通じて「誰かの笑顔につながるお買い物」を掲げ、単なる商品購入だけに終わらないとりくみを広げようとしています。世界の様々な国や地域をご覧になっているサコさんから見て、他にはどのような国際社会への貢献の方法があると思われますか。サコSDGsの17の目標は一人では達成できないので、みんなで達成できればいいと思います。先進国はSDGsを叫んでいますが、開発途上国の人たちはまだ「SDGsとは何ですか」という状態にあることが多い。このこと自体が課題ではないかと思います。SDGsの存在とゴールを全世界で理解し、共有し、改善のために知恵を出し合うことが大きなステップではないでしょうか。私自身、自分の国で悲しい思いをして目が覚めました。私は大学院生の時に、環境を守る建築物の勉強をしていて、マリに帰って講演会を開きました。「電気はこんなに使ってはダメだ」と話したとき、現地の人から「電気が通っていない地域に言うな。あなたは先進国に住んでいて、余るほどの電気を使っているからそれが言えるんだ」と叱られました。一部の人たちが、「自分たちがこれ以上資源を使い続けてはまずい」というエゴで削減目標を設定する。その目標を途上国にも認めさせて、守らせるという非常におかしな流れを作ってしまったのです。畑結果的にそうなっているとしたら、改善しないといけませんね。サコ目標達成ばかりを追いかけるのではなく、SDGsを落とし込んでいくには個々の気遣いや気づきが非常に重要です。何に気づき、そこから自分の姿勢がどのように変わるかが大事なのです。畑日本は食品ロスが大きな問題として取り上げられています。生協はもちろん、メーカーや一人ひとりの消費者が自分ごととして考え取り組まなければならないことだと強く感じています。変わっていくコミュニケーションのかたち、その中で変わらないもの畑京都生協では宅配事業の共同購入が近隣のコミュニティ形成に貢献してきたと自負しています。しかし、昨今は個人宅配への移行もあり、共同購入が減少しています。京都生協ではこれに代わるコミュニティを地域に作っていければいいなと感じています。サコさんが専門とする「空間人類学」の観点から考えた場合、現在の日本、京都に住む人が求めるコミュニティとはどのようなものでしょうか。サコ私は学生時代、大家さんの奥様にすすめられ生協で共同購入を利用していました。奥様が注文書を確認したり、商品を下宿に届けてくれたりと、細かいコミュニケーションをとっていたのです。このプロセスが、コミュニティを形成する上で一番重要です。個人単位になっているのは、時間が人と合わせにくい、買ったものを人に見られたくないなどの理由があると思います。それでも食を通したコミュニケーションは重要で、大学04コーポロ2019年1月号※1頼もしき隣人たらん「頼もしくあるために個人として自立し、助け合いの精神を持ちましょう」というの意味。初代理事長・能勢克男が呼びかけ、せかつお1964年に京都生協の前身である洛北生活協同組合を設立しました。以降、京都生協の理念として掲げられています。