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概要

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教えて!森田さん?食の安全・安心情報を科学的視点で、皆さんに分かりやすくお伝えするコラムです。今月のテーマ新しい食の技術は本当に安全?遺伝子組換えとゲノム編集最近、「ゲノム編集技術」という言葉をよく聞きます。「ゲノム」とは遺伝子や染色体のことで、ゲノム編集技術とは、特定の遺伝子を狙って切断して変異を起こさせる技術です。ここ10年で、はさみの働きをする酵素などの技術が進み、医療や品種改良などさまざまな分野で応用されるようになりました。一方、遺伝子組換え技術は、ある生物の細胞から遺伝子を取り出し、別の植物などの細胞の遺伝子に組み込むことで新たな性質を加える技術です。こちらは20年以上前に実用化されました。いずれも方法は違いますが、新しい科学技術で遺伝子に変異を起こさせるという点では同じ。このため、安全性について不安の声も聞かれますので、今回はその仕組みをご紹介します。遺伝子組換え技術は安全性審査が必要遺伝子組換え技術は、異なる生物の遺伝子(外来遺伝子)を導入するため、自然界では起こり得ない性質が加わります。このため、食品衛生法では事前の安全性審査が義務付けられています。遺伝子組換え食品ごとに、「新しい性質に毒性はないか」「食べ続けても大丈夫か」「アレルギーにならないか」などが評価され、問題がないと確認されたものだけが流通してもよい仕組みとなっています。もし輸入時に未承認の遺伝子組換え食品が見つかると、直ちに廃棄処分などが命じられます。2020年5月現在、厚生労働省は8作物・323品種の食品、45品目の添加物を承認しています。日本では20年以上前から輸入されていますが、安全性で問題になったケースはありません。ゲノム編集技術は安全性審査不要、届出のみ一方、ゲノム編集技術では、単に中の遺伝子を切るだけであれば自然界の突然変異でも同じことが起遺伝子組換え技術とゲノム編集技術の違い方法こり得ます。このため、厚生労働省は原則として安全性審査は不要として、事前の「届け出」のみを求めることにしました。ただし外来遺伝子が導入される場合は審査が必要です。届け出では、どのような変異が起こっているのかなどの安全性情報も求められ、その内容は厚生労働省のWebサイトで公表されます。新しい技術が社会に受け入れられるためには、慎重さが求められ、情報開示も不可欠です。今後も注意深く見ていく必要があるでしょう。次回はこれらの表示制度を見ていきましょう。※厚生労働省:ゲノム編集技術応用食品等https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/bio/genomed/index_00012.html(2020年6月現在、届け出された食品はまだありません)執筆者PROFILE消費生活コンサルタントもりた森まき田満樹遺伝子組換え技術遺伝子に別の生物の遺伝子を組み込むゲノム編集技術生物の中にある遺伝子の特定部分を切る歴史1990年代に実用化現在開発中事例規制害虫に強いトウモロコシ、除草剤耐性ダイズなど事前の安全性審査が義務化GABAを多く含むトマト、筋肉の多いマダイなど事前の届け出(外来遺伝子導入は審査必要)表示義務(一部のみ)不要(情報提供のみ)(一社)Food Communication Compass代表。東京海洋大学非常勤講師。食品安全、食品表示、消費者問題について講演や執筆活動を行っており、消費者庁や厚生労働省の検討会の委員も務める。著書は『新しい食品表示がわかる本(女子栄養大学出版部)』『食品表示法ガイドブック(ぎょうせい)』など。10コーポロ2020年8月号