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【食の安全・安心】「天然」「自然」だから「安全」か?

  • 2024年03月30日
  • お知らせ

【今月のテーマ】「天然」「自然」だから「安全」か?

 食品に限らず化粧品などでも、「天然、自然、ナチュラルだから安全」といった言葉をよく見かけます。「人工」「合成」は悪いイメージ、「天然」「自然」は良いイメージがあるようですが、実際はどうでしょうか。

自然だから安全とは限らない
 食品が安全かどうか、そのリスクを科学的に考える時、有害な物質がどのくらい含まれるかによって決まります。フグ毒やキノコ毒のような自然毒、カビに含まれるカビ毒、食中毒の原因ともなる微生物、土壌や海水から吸収される重金属、じゃがいもの芽に含まれるソラニン・チャコニン類など、天然の食品でも、有害なものを含むことがあります。例えば、小学校の授業でじゃがいもを栽培し、管理が悪いと皮などに含まれるソラニンの量が増えて食中毒が報告されることがあります。天然だから安全とは限らないのです。
 天然の食品はさまざまな成分で構成されており、含まれる量もさまざまで、必ずしもリスクが明確になっているわけではありません。食経験のあるものを普通に食べていれば問題がありませんが、体に良いからと特定の食品ばかりを偏って食べたりすると、リスクが高まる場合もあります。
 一方、人工・合成のイメージが強い農薬や添加物などの化学合成品は、あらかじめリスクが評価され、人に健康影響がないような摂取量の上限が定められています。食品ごとに基準値などが決められ、それを超えないよう生産・製造現場でリスク管理されています。基準値は十分に安全率が掛けられており、基準値を少し超過してもすぐに健康に影響が出るようなことはありません。とはいえ、かつて意図的な農薬混入事件などがあったように、こちらも量が多ければリスクが高まります。
  どのような食品でもゼロリスクはなく、リスクはハザード( 危害)とその摂取量で決まります( 図)。天然であれ、合成であれ、この原則は変わりません。

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天然の食品で注意する点は?
 量の取り過ぎといえば、サプリメントのような健康食品に注意が必要です。特定の成分が濃縮されており、味もにおいもないため、1 粒で多量の成分を簡単に摂取することができ、リスクが高まります。健康食品の中には「ナチュラル」をアピールしている食品もありますが、こうしたうたい文句は科学的には「安全」を意味するものではありません。
 例えば、野菜などに含まれるβ - カロテンは栄養成分で、がんや心疾患の予防に効果があるとされてきました。しかし、喫煙者がサプリメントとして長期に大量摂取すると肺がんの発生リスクを上げたと報告されています。また、台湾でかつて食べられていたアマメシバという薬草も、濃縮してサプリメントになると健康被害が報告され、死者も出ています。
 天然だからと安心せず、まずはハザードとリスクの考え方を知って、さまざまな食品をバランス良く取ることが安全な食生活につながります。

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社会的テーマから身近なテーマまで「食」の安全に関する情報を専門家が解説
食の安全・安心」は機関紙コーポロに毎月掲載しています。

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