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【教えて!森田さん 食の安全・安心】実用化が進む ゲノム編集食品

  • 2022年06月06日
  • とりくみ・活動

【今月のテーマ】実用化が進む ゲノム編集食品

日本ではゲノム編集食品の実用化が昨年より始まり、トマト、マダイ、トラフグが通信販売などを通して食卓に上がるようになりました。安全性や表示がどうなっているのか、現状をお伝えします。

ゲノム編集食品の安全性の仕組み
ゲノム編集技術は、ハサミの役目をする酵素を用いて遺伝子の特定の場所を狙って切断、編集する技術です。切れた部分から変異が起こることで、新しい性質が加わります。この技術を利用して2010 年代から動植物の品種改良の研究が進み、2019 年には国による規制の枠組みが決まりました。

食品の安全性については厚生労働省が窓口となり、自然界でも起こりうるような遺伝子の変化であっても、開発企業が安全情報を届出します。
一方、他の生物からの遺伝子を外から導入する場合は自然界で起こり得ない変異のため、遺伝子組換え食品と同様の安全性審査が義務付けられます。いずれも厚労省に事前相談が必要で、食品の安全情報が公開されます。なお、表示に関して消費者庁は義務化とせず、情報提供を求めることとしました。

2022_06_morita_ゲノム編集食品.jpg届出第1号はトマト、第2・3号は魚
2020 年12 月、届出第1号となったのが、GABA 含有量を高めたトマトです。GABA は高めの血圧を下げる成分として知られ、ゲノム編集技術によって通常トマトの5 ~ 6 倍まで含有量を増やしています。厚労省で公開された届出内容を見るとアレルゲンや毒性物質など増えていないこと、GABA 成分の安全性が確認されていることが分かります。開発企業※1は2021年に通信販売を開始しています。

届出第2 号は、京都大学と近畿大学が共同で開発した肉厚マダイです。ゲノム編集技術によって筋肉の成長を抑える遺伝子のミオスタチンを働かないようにして、従来と比べて肉付きを1.2 倍にして食べられる部分を増やしたものです。こちらは開発企業※2が2021年9 月に届出を行っていますが、様々な安全性について確認していることが届出内容から見て取れます。

さらに同社は翌10 月、通常よりも成長速度が2 倍のトラフグについての届出も行っています。こちらもフグ毒なども含めた安全性が確認されています。

以上のとおり、今のところは届出や表示がきちんと行われたゲノム編集食品が流通しています。

開発企業は情報提供を
他にも現在研究中として、「ソラニンなど天然毒素を大幅に減らしたジャガイモ」「穂につく粒の数を増やした多収性のイネ」などがあり、近く届出されるでしょう。

今後もゲノム編集食品の市場は拡大するものと思いますが、新しい科学技術なだけに不安を持たれる方もいらっしゃると思います。消費者の信頼を得るためには、国、開発企業、研究者などが適切な情報提供を行い、コミュニケーションに努めることが求められます。

参考)
厚生労働省:ゲノム編集技術応用食品等
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/bio/genomed/index_00012.html
※1 サナテックシード(株)青空トマト学園
https://aozora.p-e-s.co.jp/marche/lp-hgtTrial
※2 リージョナルフィッシュ(株)
https://regional.fish/

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教えて!森田さん 食の安全・安心」は機関紙コーポロに毎月掲載しています。




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