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【教えて!森田さん 食の安全・安心】 農薬の「再評価制度」

  • 2022年07月28日
  • とりくみ・活動

【今月のテーマ】農薬の「再評価制度」

2021年度から農薬の再評価制度が始まっています。わが国で多く使われているグリホサート(除草剤)やネオニコチノイド系農薬(殺虫剤)などから順次、最新の科学を取り入れた再評価が実施されています。制度について見ていきましょう。

過去に登録された農薬 最新の科学で再評価
日本の農薬は、農薬取締法の登録制度によって、国が安全と判断したものだけが登録され、使ってもよいとされています。登録の際には、農薬メーカーが毒性、作物への残留、環境影響などに関するさまざまな試験を行い、国が審査します。いったん登録された農薬は3年ごとに再登録されますが、これまでは新たな試験や審査は基本的に不要とされてきました。

しかし、科学は常に進歩しています。農薬が人や環境に及ぼす影響について、過去には分からなかったような新しい知見や考え方が出てきています。そこで2018年に農薬取締法が改正され、過去に登録された全ての農薬に対し、最新の科学的知見をもとに安全性を再評価する制度が導入されました。

優先度をつけて順番に再評価
農薬取締法の登録制度における試験項目は、昭和46 年には10 試験程度だったのが、使用者への影響評価、環境影響評価、長期毒性・短期毒性などの毒性評価など徐々に増えて、現在は92試験が必要とされています。再評価制度では、農薬を使用する作業者やミツバチ、生活環境植物への安全性評価に関する審査のさらなる充実が求められています。例えばミツバチへの影響は、これまでは養蜂に用いるミツバチが直接農薬を浴びた場合の影響などが評価されていましたが、再評価では農薬を浴びた花粉や花蜜の巣への持ち帰りによる、巣内のミツバチへの影響なども評
価されます。

再評価制度のもとでは、過去に登録された農薬で登録時にはなかった評価項目があれば、新たな基準のデータの提出が必要となります。2018年の法改正では、再評価の対象となる登録済みの農薬の数があまりに多いため、優先順位をつけて順次再評価を行っていくことになりました。まずはわが国で多く使われているものとして、初年度はグリホサート、ネオニコチノイド系農薬など14 成分が対象です。(図)
2022_08_copolo_anzen_anshin.jpgこれらの農薬は一部の国で既に使用規制を行っているものもあり、消費者の関心の高い農薬でもあります。再評価制度で人への影響、環境への影響を厳しくチェックすることで、安全性の向上を期待したいと思います。

資料
2021年10月食品安全委員会・食品安全セミナー「農薬の再評価」
https://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20211028ik1

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教えて!森田さん 食の安全・安心」は機関紙コーポロに毎月掲載しています。




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