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【食の安全・安心】科学的な知見とは?

  • 2024年05月01日
  • お知らせ

【今月のテーマ】科学的な知見とは?

 私たちが食品安全や環境問題などを考える時、科学的な知見がどのくらいあるのかが参考になります。例えば地球温暖化の原因は、気候変動分野における科学的知見の蓄積によって、人の活動による影響が大きいことが分かり、CO2 削減などの対策が講じられています。ここでは食の分野について、見ていきましょう。

科学的知見を集め、評価する食品安全委員会
 食品が安全に食べられるかどうかは、食中毒を起こす菌やウイルスに汚染されていないか、添加物や農薬に問題はないか、異物混入がないかなどの視点があります。食品にはさまざまなハザード( 危害要因)があり、その量によって安全かどうかが決まります。どのくらいなら健康への影響がないのか、科学的に評価する必要があります。
 それを行っているのが、2003年につくられた食品安全委員会です。当時、食品安全を守る新しい仕組みが国際的にも提唱され、科学者が独立して評価を行う機関が必要とされました。食品安全委員会の評価に必要となるのが、科学的知見に基づくデータの充実です。
 食品安全委員会ではテーマごとに科学者による専門委員会をつくり、ときに数千もの論文を収集し、科学的知見に基づいてリスク評価を行います。これら評価書やファクトシートは、食品安全委員会のサイトで公開されています。このリスク評価に基づいて、農薬や添加物、放射性物質、カビ毒などの基準がつくられ、それを守るように管理されています。

健康・栄養に関する科学的知見は?
 それでは、食品安全以外の科学的知見はどうなっているのでしょうか。例えば栄養に関しては、厚生労働省が「食事摂取基準」を定めており、さまざまな栄養成分(ビタミン、ミネラルなど)が私たちの体でどのような役割を果たしているか、どのくらい摂取すればよいのかを示しています。5年ごとに見直しが行われ、こちらも科学者が世界中の膨大なデータをもとに評価を行います。
 一方、健康食品については科学的根拠が弱いものが多く見られます。論文のグラフなどが示されて科学的根拠があるように見えるものもありますが、1つの論文だけで効果がどこまで言えるのかは分かりません。「科学的」と言われるとつい信用しそうになりますが、常に批判する目を持つことも大切です。
 食品安全や栄養は国の政策に関わる問題であり、科学的知見に基づいて評価が行われ、その情報は公開されています。市民の理解が得られるように、リスクコミュニケーションや啓発活動も行われています。こうした場に参加したり、ときに関心があるテーマを調べてみたりしてはいかがでしょうか。

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社会的テーマから身近なテーマまで「食」の安全に関する情報を専門家が解説
食の安全・安心」は機関紙コーポロに毎月掲載しています。

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