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【食の安全・安心】食料危機とテクノロジー

  • 2025年12月16日
  • お知らせ

【今月のテーマ】食料危機とテクノロジー

食料危機と日本で言われてもピンとこないかもしれませんが、世界では食料が不足し飢餓に苦しむ人が約7億人(世界人口の8.5%)いると言われています。
その解決策としてさまざまなテクノロジーが注目され、日本でも取り組みが進んでいます。

食料危機の背景
 国連のSDGs(持続可能な開発目標)では、目標2「飢餓をゼロに」を2030年までに達成することを目指しています。しかし、世界の飢餓人口はコロナ禍以降高水準で推移しており、この傾向が続くと目標達成は極めて困難であると予測されています。
 その背景には、世界の紛争と気候変動があります。地球温暖化の傾向は続いており、今後も異常気象が予想され、干ばつなど農作物の収穫量を激減させます。特に日本は食料の多くを輸入に頼っているため、国際市場での穀物価格や燃料価格の高騰、円安などが複合的に作用し、国内の物価高がこれからも続く可能性もあります。

フードテックの可能性
 このような状況の中、持続可能な食料生産のための解決手段として注目されているのが「フードテック」です。フードテックとは、「フード」と「テクノロジー」を組み合わせた言葉で、食の最先端技術のこと。以下のような事例があります。
【農業分野での生産効率向上】
センサーで気温、湿度、土壌水分などを計測し、AIが最適な水やりや施肥のタイミングを判断して収穫量を最大化。種まき、雑草除去、収穫などを自動で行うロボットの導入。植物工場・陸上養殖などのスマート農業。
【新しい食料開発】
植物由来の大豆ミート、動物の細胞を培養してつくる培養肉など、従来の畜産業に比べて環境負荷を軽減。ゲノム編集技術により栄養価の高い品種や、効率良い生産を目指す。
【フードロスの削減】
飲食店や小売店でAIを活用し、販売予測の精度を高めることで、過剰生産や過剰発注を防ぎ、食品廃棄物を削減。特殊な冷凍・冷蔵技術や包装技術により、食材の長期保存を可能にし、流通や家庭のロスを削減。
【流通・消費の効率化】
外食中食における調理ロボットの導入、AI技術による個々にあった食事の提案など。

 食料危機は複数の要因が絡み合っていますが、フードテックはこれらの課題に対処するための解決策の一つとなるでしょう。一方、消費者からは新しい科学技術を用いた食料生産に対しては安全性を心配する声もあります。安全性の観点から規制が必要なものもあり、表示などの情報開示が求められるものもあります。フードテックを進めるには、消費者への十分な情報提供とリスクコミュニケーションが求められています。

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社会的テーマから身近なテーマまで「食」の安全に関する情報を専門家が解説
食の安全・安心」は機関紙コーポロに毎月掲載しています。

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